研究概要 |
本年度は当初の目的である(1)文献調査および初期分析,(2)データの収集・入力,(3)計量モデルによるデータ解析のうち,(1)(2)を中心に行ってきた.データソースである地方公営企業年鑑,水道統計記載のデータはほぼ入手が完了し,今後新しく公開されるデータを随時追加入力していく段階である.また,水道事業における垂直的取引構造に関するインタビュー調査を内閣府委託調査「地方公共料金の実態及び事業効率化への取組についての分析調査」へ副主査として参加しつつとり行ってきた.水道事業の実務レベルでの垂直統合への取り組みの実態を理解するうえで貴重な経験であった.垂直統合(広域化を含む)の概要については今年度中に発刊される近畿大学経営学部80周年記念論文集に掲載予定である.また,初期分析の一部としての末端給水事業および用水供給事業の費用構造分析については平成17年度8月にオランダの自由大学(Free University)にて開催されたヨーロッパ地域学会(ERSA)において報告し,そこでの議論を参考に修正されたものが,平成18年度発刊予定の近畿大学経営学部紀要「商経学叢」に掲載予定である. 今後の分析の方向性としては,水道事業の取水・浄水部門と配水部門との垂直統合の経済性の実証分析を進めていく予定である.これは,今日議論されつつある,用水供給事業と末端給水事業との広域統合に関して果たして効率性の追求の可能性があるのかという点について定量的に分析を試みるものであり,今後の政策決定に有用な情報を提供することが可能となる点で一定の意義が見出されるものと考えられる.この研究は平成18年度8月にギリシャで開催されるヨーロッパ地域学会にて報告することが予定されている.(タイトル:Economies of Vertical Integration in the Japanese Water Supply Industry)
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