本研究の目的は、労働、資本、中間財等が特定の地域に集中している状溌において発生する集積の利益が、いかに産業発展を推し進めるのかを、長期的な企業レベルデータを利用して実証的に分析することである。3年目である平成19年度は、これまで行ってきたフィールド調査から構築されたパネルデータを利用して、学術論文を執筆した。具体的には下記のようなアプローチをとった。 (1)標準的な計量経済学的手法に基づいた統計分析を行った。 (2)統計分析結果を経済学的理論の枠組みの中で考察した。この際には、フィールド調査から得られた現実的な知見も考慮しつつ産業整展メカニズムを提起した。 論文の中で人的資本と社会的信頼が生産性上昇に与える効果を検証した。統計分析の結果、これらの効果が集積地の発展段階によって、大きく変化したことが確認された。これは過去に筆者が発表した備後地域の縫製業発展モデルと整合ト的なものとなっている。現在は、他の研究者からのコメントを参考にして論文の改良し、国際的な学術雑誌に投稿する準備を進めている。さらに、今後は本研究で明らかにされた社会的信頼が、経済社会に与える効果をより詳細に検証する予定である。 児島地域との比較のために、長期間のパネルデータを利用し、関東地域の集積研究(1本)日本全体を対象とした産業集積(1本)の論文も執筆した。これらの研究により生産の効率性の決定要因が長期的な産業発展の中で、大きく変化したことがわかった。これらの研究は国際的な学術雑誌に掲載された。
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