平成18年度は、"Imitative learning in Tullock contests : Does overdissipation prevail in the long-run"というタイトルの論文を執筆し、日本経済学会2006年度秋季大会で報告。同論文を査読付き専門雑誌に投稿した。この論文は、タロック(Tullock)型のレントシーキング・コンテスト(以後、タロック・コンテストと呼ぶ)の長期均衡においてレントの過大消失が生じるのか否かについて、進化ゲーム論的手法を用いて分析したものである。先行研究では、進化的に安定な戦略(ESS)においては過大消失が起こり得ることを示しているが、ESSの概念は進化的動学の過程が明示されていないので、定常均衡をもたらす力の源泉が何か知ることはできない。したがって、私の研究では、その力の源泉をレントシーカー間の模倣行動と見なし、その行動を具体的にモデル化した。この明示的な動学モデルにおける確率的に安定な状態(SSS)がESSと一致するのは、レントシーカーが単純な模倣ルールに従って行動するときであることを示した。しかし、単純な模倣ルールはレントシーカーの個人合理性制約または参加制約が満たされていないという点で非現実的であると言える。この制約と両立する模倣ルールに修正すると、確率的に安定な状態において過大消失は起こり得ないことを示した。この論文は現在、他の査読付き専門雑誌に投稿するために修正中である。
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