本年度は、オランダでの現地調査を通じて環境協定などの気候政策に関する制度的分析を行い、その特徴・特質を明らかにした。 オランダの気候政策の環境協定は、第1次長期エネルギー協定(LTA1)、ベンチマーキング協定、LTA2の3つある。LTA1は2000年に終了し、現在、大工場向けにベンチマーキング協定、中規模工場向けにLTA2が実施されている。3つの協定の特徴は、(1)業界又は企業に対して、環境効率性の改善目標を設定していること、(2)参加企業は目標を達成するためのエネルギー効率化計画の策定、その進捗状況を毎年監査機関へ提出が義務づけられていること、(3)協定に参加した企業は政府による新た政策強化を回避できること、(4)課せられた義務に対して不履行の企業は厳しい追加的な政策を課されることなどがあげられる。 改善すべき課題として、第1に、環境効果については、LTA1では効率性目標が部門全体では達成されたが、業界毎に定められた目標は半分以上が未達成であることや、部門全体のエネルギー消費量が増加した。現行の2つの協定も、効率性目標が京都議定書のような総量目標を確実に達成させる保証がない。第2に、ベンチマーキング協定とLTA2の締結により、政府は2012年まで新たな政策を導入できないため、京都議定書の第2約束期間交渉やEU内の政策の変化に対応できない。第3に、モニタリングの情報が企業情報の秘匿性を理由に、概要のみの公開にとどまっており、進捗プロセスの透明性を充分に確保できていない。第4に、モニタリングが詳細に行われるほどその費用がかさみ、行政コストの削減という環境協定のメリットを得ることができない。
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