本研究は、新しいフェーズに差し掛かっているタイ国自動車産業において、特にタイ系企業がどのような能力を構築していけば、製品開発(R&D)のプロセスに参加できるようになるのかを検討することを目的としている。 初年度は、計画に準じて、先行研究や現地での聞き取り調査から、改めてR&D能力及びものづくり能力というものの構成要素を定義付けていく作業を推進した。結果として、理論形成のベースとなりうる4本のコンセプトペーパーを取りまとめたが、それらはいずれも本研究の仮説を補完するような結論に至っており、1.QCDレベルからの能力形成プログラムのフィージビリティ、2.人材育成と並行して進展されるべき企業のマネジメント強化政策の重要性、を説明するものである。 また、現地調査の結果を踏まえて、タイ系企業のR&Dまわりの現有能力を把握するためのアンケート調査を実施した。調査は、TAPMA(タイ国自動車部品工業会)、TAI(タイ国自動車研究所)、JETROバンコックセンターの協力の下、400社に対して実施され、本年度中に回答の一部が集計されている。結果は、日系企業とタイ系企業の立場や見解の大きな相違が明らかになっているもので、タイ系企業に特化もしくはカストマイズされたR&D能力構築プログラムが必要であることを裏付けるものであった。尚、本年度までの研究成果の一部は、2006年3月24日にタイ国バンコックにて開催された第5回ASEAN自動車裾野産業会議で報告された。 最終年度には、調査に回答した企業の中から、R&D能力を成熟させている企業を抽出し、より詳細な現地調査によって、モデル構築に有用な情報を収集すること、そして、タイ系企業やタイ国工業省及び日本の同分野の援助関連機関、専門家が活用可能な能力構築モデルとプログラムを提供していくことを目的として、研究を推進していく。
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