研究概要 |
Diamond(1965)タイプの2期間世代重複モデルに,賦課方式の年金を導入し,「長寿化」(期待寿命の上昇)および「少子化」(人口成長率の低下)による高齢化の進展が,経済成長率に及ぼす影響について考察を行った。主要な結果は以下のようになる。第1に「人口成長率」と「経済成長率」の間に逆Uすの関係が成立することを示した。人口成長率が十分に低い場合,人口成長率の上昇は,賦課年金の社会保険料負担の低下を通じ,貯蓄および1人当たり資本の蓄積を促進し,経済成長率に正の影響を及ぼす。しかし更なる人口成長率の上昇は,貯蓄の希薄化を招き,1人当たり資本の蓄積を阻害し,経済成長率に負の影響を及ぼす。第2に「期待寿命」と「経済成長率」の間にも逆Uすの関係が成立することを示した。期待寿命が十分に低い場合,期待寿命の上昇は,人々に老年期に備えた貯蓄をする動機を与え,貯蓄および1人当たり資本の蓄積を促進し,経済成長率に正の影響を及ぼす。しかし更なる期待寿命の上昇は,社会保険料負担の上昇を通じ,貯蓄および1人当たり資本の蓄積を阻害し,経済成長率に負の影響を及ぼす。以上の結果は,先進国における「長寿化」,「少子化」による高齢化の進展がともに経済成長率に負の影響を及ぼす可能性があることを示唆する。以上の研究成果("Demographic Structure and Growth: the effect of unfunded social security")はレフェリーによる査読を経て,学術雑誌Economics Lettersへの近日中の掲載が決定している。またH18年度に作成した学術論文"Spillover Effect of Population Aging, International Capital Flows, and Welfare"を62nd European Meeting of Econometric Society (Budapest 2007)にて報告する機会を得た。
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