本研究は、団塊世代の定年退職に伴うオフィス需要の減少の調整メカニズムを分析したものである。特に、地域間の人口移動を伴う調整が進むかどうかに着目した実証分析を行った。その結果、地域間の限界生産性の差が依然として存在しており、潜在的な人口移動を引き起こす要因となりうることが明らかとなった。特に、地域経済が公共事業によって支えられてきた地域では、人口流出圧力がかかり、大都市集中が一層進むことが予測できた。つまり、現在のままでは、地方では、一層の過疎化が進行することが明らかとなった。 こうした中、本研究では、ドイツ、フランスにおける「ニュー・アーバニズム」型まちづくりを実施している都市を訪問し、資金調達手法や政策の考え方を現地で調査するとともに、滋賀県長浜市での、中心市街地再生策を長浜商工会議所にて、ヒアリング調査を実施した。そこで、いわゆる「まちづくり3法」で議論されてきた郊外開発規制のみでは、地域再生は実現できず、中心市街地への再投資を促す政策が必要であることを指摘した。具体的には、固定資産税を担保とする財源調達(Tax Incremental Financing)手法の導入やフランスの交通税のような新税の導入など、都市政策を税制のリンクさせるような施策を提案するにいたった。また、これらの分野に研究蓄積が不足していることが発見でき、新たな研究フィールドとしたい。
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