2006年10月に、入札談合に関する実験を行った。この研究では、被験者が入札前に他の入札者と入札価格について、コンピュータ上で話し合いができるようにした(チャット形式)。この状況で、リニエンシー制度がカルテルを壊すためにどの程度効果的かを実験検証した。実験は以下の3つのケースを比較した。 (1)完全競争入札(被験者間のコミュニケーションなし) (2)課徴金制度あり(入札前の談合が見つかれば罰金が課せられる) (3)課徴金+リニエンシー制度あり((2)にリニエンシー制度を導入) 実験のデザインは、日本のリニエンシー制度の特徴のいくつかを反映したものにした。たとえば、課徴金の額は、落札価格の10%とし、課徴金減免を受けられるのは3人で、1番目の告発者が100%減免、2番目の告発者が50%減免、3番目の告発者が30%減免とした。 この実験は、2005年に、競争政策研究センターのスタッフと行った共同研究"An Experimental Study of Procurement Auctions with Leniency Programs" (CPRC Discussion Papers 24-E。共著者:石川淑子(日立総合計画研究所)石本将之(公正取引委員会事務総局)木村友二(競争政策研究センター研究員)丹野忠晋(跡見学園女子大学マネジメント学部助教授)をもとにしている。今回行った実験では、カルテル・グループがゲームを継続できる確率を明示して、より理論モデルと整合性がとれるように実験した。
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