研究概要 |
本研究では,異質(heterogeneous)な家計が共存する貨幣動学モデルを考えることにより,賦課年金制度の財源として消費税を用いた場合のマクロ経済への影響を分析する。本年度においては,研究の基礎的な部分として,消費税そのものの影響に関して考察を行った。 本年度の研究により,まず,異なる世代の共存する貨幣動学モデルでは,各家計から得られる消費税収を各家計にそのまま補助金として与えたとしても,税率の変化は家計の流動性の変化を通じて経済成長や各世代の厚生に様々な影響を与えることが分かってきた。例えば,消費税率の増加は,家計の購買力の減少を通じ,実質の手元流動性を減少させる.これにより,家計は減少した実質流動性を増やそうとするが,世代重複モデルでは代表的個人モデルとは異なり,貨幣が純資産として存在しているため,この実質貨幣保有上昇が成長率や厚生に影響を与え得る。そして,その影響は,人口構成比率や金融政策の程度にも密接な関係があることが分かってきた。この中で,本年度の研究では,様々な水準の金融政策下において,消費税そのものの経済成長や厚生への影響がどのようなものか,という点に関し,既存研究のサーベイを行い,理論分析に取り組んだ。特に,理論分析の部分において,消費税収を基に世代間の再分配に関する程度を制御できる基礎的な理論モデルを構築した。この研究をもとに,貨幣経済において賦課方式年金が存在する場合に関し今後の分析で明らかにしていく。
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