本年度の前半はデータベースなどから金融再編を市などの地域単位で把握し、後半はこれに基づきネブラスカ州などで現地調査を行った。 前半については、米国連邦預金保険公社のデータベースなどから割り出した「統廃合進展・新設少」のネブラスカ州の諸市に接近したが、金融再編を空間的に捉えるため、当該市内とZIP-code(郵便番号)での集計データと個別銀行のデータの収集・分析を行った。これらを通じ、統廃合・新設・存続の(当該市に本店をもつ)地元・非地元銀行の預金残高などのマーケットシェアの推移と個別銀行の貸出構成の変化、(市外の持株会社傘下にない)独立・非独立といった個別銀行の組織形態の変更、ローンオフィサーの移動・移籍などから、当該地域がリレーションシップバンキング(リレバン)の機能しうる環境にあるのか(あるいは当該地域で機能する環境)を明らかにした。この成果は研究実績『米国における金融再編とリレーションシップバンキング-地域の人口動態別の接近-』へと繋がった。 後者については、本研究にとって重要な米国現地調査、具体的にはネブラスカ州ダグラス郡オマハ市および周辺地域などで調査を実施した。個別の銀行のヒアリングに加え、ZIP-codeの(相互的な)位置関係や取引先企業の業種の把握などにも力点を置いた。こうした調査から、前半部 分で検討したリレバンの機能する環境や組織に関する重要な論点が確認されるとともに、Sコーポレーションバンクの調査の必要性などが明らかになった。この成果は研究実績『米国における金融の再編と地域性』として現れた。
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