米国地域金融における小規模金融機関の役割について分析した。 すなわち、米国の金融再編というと、銀行数の集約傾向ばかりが取りざたされる嫌いがあるが、事態はそれほど単純ではない。再編が一巡した現在(2006年末)も、銀行数の93.33%は総資産額10億ドル未、満の小規模銀行であるし、年間に100〜200行の小規模銀行が新設される。この理由の1つは、地域密着の継続に求められる。たとえば、リレーションシップバンキングでは取引先経営者などのソフト情報を用いるため、その情報を活かしうる小規模銀行に一定の存在価値がある。また、小規模銀行を下支えしうる、Sコーポレーション(株主数や株式の種類は制限されるものの連邦法人所得税のかからない株式会社)の仕組みなども存在する。 小規模金融機関(銀行・貯蓄金融機関・クレジットユニオン)について、州単位で接近してみると興味深いことが分かる。各州の全金融機関「数」に占める小規模金融機関数の比率をとると、Sコーポ銀行比率が低い州では小規模貯蓄金融機関やクレジットユニオンの比率が高いなど、多くの州でいずれかの小規模金融機関が存在している。また、各州内の全金融機関による事業向貸出「額」に占める小規模金融機関のそれのシェアをとると、通常の認識(全米平均)とは異なり、事業向貸出マーケットが大きくない多くの州において、小規模金融機関の同貸出額シェアが大きいことが分かる。 規制緩和に伴う再編から、全米レベルでみて、小規模金融機関のプレゼンスが低下しているのは事実だが、世の中がますます多様化していくなかで、今後も一定のプレゼンスを維持すると考える方が自然だろう。
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