前年度に引き続き、ティック・データを用いた流動性指標の作成とそのモデル化、ならびに株式投資単位引き下げが流動性指標にどのような影響を与えるのかについての分析を行った。前年度は市場のtightnessを表す指標としてビッド・アスク・スプレッドを採用し、そのモデル化を行った。今年度は、株式投資単位引き下げ前後でビッド・アスク・スプレッドが変化したかどうかを検証した。 2000年に東京証券取引所第1部で取引された個別株式に関するティック・データを利用した検証の結果、株式投資単位引き下げを実施したほとんどの企業について、ビッド・アスク・スプレッドは縮小し、tightnessの観点からすると流動性が向上したことが明らかになった。 さらに、本年度はmarket depthを計測する指標としてSVNETを提案し、この指標のモデル化を行った。SVNETはEngle and Lange (2001)で提案されているVETを、日本株式市場に適用するために簡略化したものである。分析の結果、投資単位引き下げを行った企業について、SVNETは投資単位引き下げ前後で有意に差がないことが示された。このことは、株式投資単位引き下げがmarket depthの観点からすると流動性向上に寄与しないことを意味する。 また、SVNETは企業により、その変動特性が大きく異なることも明らかになった。したがって、market depthをモデル化するためには、企業規模などの企業特性を考慮する必要があることが示唆される。
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