本年度は課題についての既存研究のサーベイを行い、理論論文と実証論文のそれぞれのジャンルについて問題点のリストアップ作業を行った。これらを踏まえて来年度には理論的課題についてモデル化の試みを行う予定である。 今年度の研究実績としては、まず、金融仲介機関の銀行と生保の関係について実証的観点から分析を進めており、その一部の第一次原稿(ワーキングペーパー)を書き終えた段階である。これらの分析を通じて、銀行貸出と生保貸出の特徴付けを行っている。今後は、従来から知られる「限界資金供給者説」的な見方について、情報生産者としての金融仲介機関の観点からは説明がつかない可能性について分析を進める予定である。具体的には、分析手法の精緻化や、検証期間の拡張を行う予定である。 次に、中小企業金融のデータを用いた実証分析については、上記のサーベイを経ていくつかの課題を発見したが、これを実行するためのデータの入手可能性について検討し、他の研究者の協力を経て実行する準備段階である。 そして、中小企業金融の金融行政の問題については、信用保証制度について調査を行っている。今年度は、近年の日本の信用保証制度の変更やその実績に関するこれまでの研究の評価の再検討を通じて、来年度以降の研究課題を決定した。具体的には、信用保証制度の課題である公平性の観点から、可変的保険料率の問題と部分保証制度導入の問題について検討を始めている。特に後者の問題については、この制度を先行して導入している韓国の現状についての実務家を通じたヒアリングを経て理論的、実証的課題を検討した。この点については近く論文の形で発表するために、原稿の準備段階に入っている。
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