研究課題
アジア通貨危機における株価や為替レート下落の伝播効果と、為替市場のマイクロストラクチャーに関する分析を行った。アジア通貨危機の伝播に関する研究では、「震源」と「伝播を受けた国」に分類し、震源国からそれ以外の国への伝播の詳細な検証を行った。東アジア域内の8カ国の為替レートと株価リターンを5営業日のウェイト付け加重平均で計算し直し、日々のリターンの中で2%超かつ最も大きな下落率を示したものを、「震源国」と定義した。この計算により、為替や株価変動で日常みられるノイズあるいはオーバーシュートを除去することが可能となる。震源からの影響は、ウェイとをとったことにより、過去の影響を震源からの伝播は、危機のきっかけとなったタイ通貨下落はそれほど大きくなく、韓国・インドネシアの通貨下落が域内他国の為替や株価下落を引き起こしていたことが明らかとなった。為替市場のマイクロストラクチャー分析では、日本の金融機関破綻が続いた1997年秋のイベント分析をおこなった。1997年8月-12月の5ヶ月について、特異な11月とそれ以外の平常期とに分け、11月に国内金融機関の破綻が続いた折、破綻のニュースによって為替市場取引が通常と大きく異なっていたことを、Quote Revisionの回数および為替動向を分析することにより明らかにした。テレビやBloombergなどによって破綻の第一報がアナウンスされた時点を0とし、その前後12時間ずつのQuote Revisionを10分毎に分析すると、三洋証券破綻ではむしろニュース後にQuote回数が増えているのに対し、北海道拓殖銀行と山一證券破綻では、破綻ニュースの流れる2時間ほど前からは極端にQuote回数が減っていることが明らかとなった。また、11月とそれ以外の月では、Quote revisionの回数が大きく異なり、11月が極めて活発であったことを示している。これは、破綻ニュースが日本経済の見通しを悪化させたことにより、売り・買い持ちポジションの訂正のために、売買が活発になったことを示していると考えられる。
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Journal of Asian Economics Vol.16
ページ: 205-222
Asian Economic Journal Vol.19, No.4
ページ: 357-381