研究概要 |
為替(円ドル、ユーロドル)の取引データを用いて、市場のマイクロストラクチャー分析を行った。取引データを1分、5分、15分、30分スライスに刻み、それぞれ前期のオーダーフロー(AskサイドとBidサイドの取引数の差)が今期の価格リターンにどのように影響するのかを、In sample予測分析を用いて確認した。すると、1分、5分ではオーダーフローが為替リターンに有意な影響を与えるものの、15,30分スライスでは、有意な効果を見ることは出来なかった。 また、1分毎に、過去30分までのオーダーフローの累積効果が今期の為替リターンにおよぼす影響についても確認した。その結果、だいたい10-20分程度で効果が消滅することが判明した。さらに、AskリターンとBidリターンを比べて、オーダーフロー別(Askサイドの純取引数が多いケースとBidの純取引数が多いケース)をみると、Askの取引数が多い場合は、Askのリターンの係数のほうがBidのリターンの係数よりも有意に大きく、(逆に、Bidの取引数が多い場合は、Bidのリターンの係数がAskのリターンの係数よりも大きい)、ディーラーは確実に売買で利益を上げていることが確認された。 以上から、為替市場においては、通貨に関係なく、オーダーフローの影響は10分程度であること、情報の影響がShort-livedであること、また年によって影響が異なることが発見された。High frequencyな取引状況においても、ディーリングでは利益をあげていることが、近年の急速な為替市場のコンピュータ取引の拡大につながっていると考えられる。 アジア通貨危機のモデル化と危機におけるIMFの処方箋に関しては、第一、第二、第三世代モデルでの説明と、現実のIMF処方との対応を明らかにした。
|