研究概要 |
近年,明治以降の日本における工業化の多様な経路・側面に関心が強まっている。本研究の主要な課題は,大都市工業圏(東京・大阪等)にみられない様々な特徴を有する在郷の鉄工所や野鍛冶等によって担われてきた「地方機械工業」の展開過程を実証的に明らかにすることである。そのケーススタディとして,農業という地域性の極めて強い産業の動向に強く規定されながら,逆にその農業のあり方を変貌させる潜在力を有した農業機械・農機具をとりあげ,具体的には,(1)産業史研究,(2)産業集積史研究,(3)地方企業家史研究のアプローチから研究課題の解明を試みた。 2カ年計画の初年度である平成17年度は,最終的な研究成果の前提となる基本資料の閲覧・収集に傾注し,具体的には,(1)基本文献・資料の収集,(2)国内資料調査(計13回),(3)海外資料調査(アメリカ合衆国・ワシントンD.C.)の3点を実施した。(1)では,本研究対象時期が明治期から高度経済成長前半までの長期間であり,かつ「地方」の視点から幅広い地域を取り扱うため,経済史・経営史・地方史など広範な分野に及ぶ基本文献・資料の収集を行った。(2)では,福岡・大阪・名古屋・神戸等の大学図書館・資料室・公共図書館などに所蔵されている貴重史資料の調査・閲覧を実施した。資料調査の結果,従来利用されてこなかった原資料・雑誌などの貴重文献・資料を入手することができた。(3)では,アメリカ合衆国・ワシントンD.C.の国立公文書館(NARA)所蔵のRG-131(Records of the Office of Alien Property)資料の予備調査を行った。調査の結果,三菱商事機械部・在米支店による機械取引,1920〜1930年代のアメリカ農業機械輸出の実態などについて明らかにできる資料を確認できた。時間的制約から全ての資料を閲覧できなかったため,次年度に本格的な調査に取り組む予定である。
|