研究概要 |
本年度の研究概要は以下の2点である.まず第1に,企業不祥事に注目し,企業の不祥事の発生メカニズムに関する網羅的なサーベイを行った.特に,企業倫理,リスクマネジメントの2つの分野に注目し,企業不祥事の発生メカニズムに関する理論体系について整理を行った.具体的には,企業倫理においては競争的環境下における従業員のモラル低下を中心とした解釈,リスクマネジメントにおいては作業手順における不備を中心とした解釈がなされていることが明らかになった. 第2に,2000年6月に発生した雪印乳業集団食中毒事件についての分析を行った.特に,事件の出発点である北海道大樹工場における汚染脱脂粉乳出荷に注目し,工場へのヒアリング調査を基に,事故発生のメカニズムについて分析を行った.従来の汚染脱脂粉乳出荷の原因は上記の2点の解釈を中心としたものであったが,事例分析の結果,この解釈は必ずしも適切ではなく,工場の中に「殺菌神話」という考え方が存在しており,この神話の存在によって事故が引き起こされたという興味深い知見が得られた.このケース分析を基に,2005年6月の組織学会研究発表大会,2000年9月の日本経営学会のワークショップにおいて報告を行った. 研究成果の全体は,現在まだ公表する段階にはないが,平成18年度には,雪印乳業株式会社の企業不祥事発生後(2000年8月以降)の企業倫理活動についての調査をさらに進め,より詳細な定性分析を行う予定である.
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