研究概要 |
本年度の研究概要は以下の2点である.第1に,昨年度の検討を基に,2000年6月に発生した雪印乳業集団食中毒事件に関する分析を行った.その中で特に,大樹工場における汚染脱脂粉乳出荷の原因についての分析を基に,企業不祥事の解釈の多様性について検討を行い,論文として出版した.具体的には,雪印乳業集団食中毒事件の従来の解釈の整理を行った上で,作業現揚における「もったない」という考え方(作業パラダイム)と,殺菌・検査工程における手続きの神話化(どのような状況においても手続きが絶対的に通用すると思われるようになること)によって事故が引き起こされるという新たな解釈を提示した.同時に,大樹工場における汚染脱脂粉乳出荷の事例についての詳細な記述を行い,論文として出版した. 第2に,昨年度に引き続き,企業がソーシャルイシュー(social issue,社会から期待されている社会的課題事項)に対応する際の問題点について調査・分析を行った.具体的には,(1)2000年6月に発生した雪印乳業集団食中毒事件,(2)2002年1月に発生した雪印食品牛肉偽装事件という2つの事件に注目し,各事件後に雪印がどのような対応策を講じたのかについて,ヒアリング調査を行い,得られた情報をもとに検討を行った.2つの対応策の比較検討の結果,食中毒事件後の雪印は,イシューマイオピア(社会的課題事項近視眼)に陥っている可能性が明らかになった.このケース分析を基に,2007年10月に組織学会の自由論題において報告を行った.
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