研究概要 |
本年度は,先ず,本研究を構成する鍵概念の1つである「産業の成熟化・脱成熟化」についての詳細な文献サーヴェイを行い,本研究の目的に適合するよう鍵概念の明確な規定を行った.産業の成熟化と脱成熟化メカニズムおよび企業の技術転換戦略に関わる既存の文献,および企業・技術・市場情報データベースの利用によって,調査対象として候補になりうる産業企業について二次資料の収集と整理を試みた.技術開発状況並びに事業成果について調査を進め,これら企業のいくつかについてより踏み込んだバックグラウンド情報の収集を行った.具体的には,素材メーカーのS社,F社,医薬品メーカーのS社,K社を対象に,パイロットスタディとして聞き取り調査を行った. 産業・市場セグメントの脱成熟化に直面して技術転換を迫られてきたこれら企業の事例研究から得られた諸知見,および申請者がこれまでに蓄積してきた研究成果を基盤として,産業の成熟化および脱成熟化,技術転換の戦略,市場開発の戦略,事業成果の関係を分析するための枠組みを構築し,鍵概念の抽出と,分析次元の選定を試みた. 現在,次年度のより詳細な実態調査に向けてのパイロットスタディを通じて,分析枠組みと仮説の精緻化が予定通り進行中である.この分析枠組みと仮説に基づいて,技術開発に関与する技術者たち,および組織内部で意志決定権限を持つマネジャーたち(主として部長,事業部長,担当取締役)を対象として詳細な聞き取り調査が開始される.これら定性的データは,数量化された技術データ,市場データとともに,整理,分析され,本年度行われた調査研究の結果と総合されて,最終的な研究成果として公表される.
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