本研究は、日本企業が国際競争力を発揮している「機能性化学」と呼ばれる製品群を分析対象として、日本企業が競争優位を発揮している背景・要因を実証的に明らかにすることを目的としている。機能性化学企業の競争優位に影響を及ぼす背景・要因としては、(1)歴史的経緯(ファースト・ムーバー・アドバンテージ等)が大きく影響を与えているケースと、(2)製品開発における組織能力やマネジメントが効いているケースとがあると推測される。したがって本研究では、「事業レベル」と「製品開発プロジェクト・レベル」の2つの視点から分析を進めている。 2年目の18年度は、(1)については、昨年度に引き続き、現在、機能性化学企業として活躍している数社に対して、創業から機能性化学企業へと発展してきた経緯についてヒアリング調査を行った。本アプローチは現在分析の途中であるが、事例の1つについては、ディスカッション・パーパートしてまとめた。来年度中に学術誌に投稿予定である。(2)については、高パフォーマンスを上げている機能性化学の代表製品の事例分析を行った。具体的には、先行する大手企業が存在する市場に後発として参入した企業が、差別化で成功した事例を対象として、マネジメントの視点から分析を試みた。本事例は、現在まとめの最中である。 なお、過年度分析した、機能性化学品のなかでも究極のファイン製品である医薬品の研究開発に関して、その後の研究成果を踏まえながら、学術書および学術書の一部としてまとめた成果を出版した(「研究発表」の項目参照)。
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