平成17年度科学研究費補助金を受け、中堅企業のトップの意思決定と事業展開について研究を進めた。研究目的は、中堅企業を経営学の視点から研究対象として取り上げ、従来の大企業研究をベースとした理論とは切り離して理論的基盤を築き、フィールド・サーベイ、インタビュー・サーベイによって独自のデータを収集し、検証を行うことであった。 国内出張においては、東京周辺だけでなく山形、富山、長野、石川、岡山、青森といった比較的千葉から離れた地方中堅企業のフィールド・サーベイを行い、これまで得られなかった資料の入手に恵まれた。また、日本経営学会の関東部会にも積極的に参加し、自らの研究成果に基づいて議論を交わすことによって、研究のさらなる発展を図ることができた。国外出張は行わなかった。 これらの助成を受けた研究の結果、得られた新たな知見は、下記のとおりである。 中小企業の多くが下請型企業である。彼らは元請企業の大企業に要請されるまま、漸進的学習能力を駆使し、迅速に対応してきた。しかし、昨今のグローバルな競争において、元請企業が事業を見直したり生産拠点を海外に移転させたりして、従来の下請関係を維持できなくなってきている。そのため、学問的には「下請型企業はそこから脱却して独自の製品市場を持つ企業へと成長すべきである」という主張がなされる。しかし、実際に達成するのは非常に難しい。その原因として、経営資源の絶対的な制約が一般的な回答である。今回のサーベイで明らかになったのは、それよりも強い要因として、トップが自らの問題意識に基づいて自社の将来を考え、自発的に意識改革できない点であった。この差が、独自の製品市場を開拓できるか、下請型企業に止まるかを分けている。 以上が、平成17年度の成果であるが、中堅企業成長の理論的基盤、それに基づく大量観察まで至っていない。まだ課題は山積しており、それに回答を与える研究を続けていく必要がある。
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