平成18年度科学研究費補助金を受け、引き続き中堅企業のトップの意思決定と事業展開について研究を進めた。研究目的は、中堅企業を経営学の視点から研究対象として取り上げ、従来の大企業研究をベースとした理論とは切り離して理論的基盤を築き、フィールド・サーベイ、インタビュー・サーベイによって独自のデータを収集し、検証を行うことであった。 国内出張においては、東京周辺(東京3社)だけでなく埼玉、静岡、新潟(以上1社)、愛知(2社)、広島(3社)といった比較的千葉から離れた地方中堅企業のフィールド・サーベイを行い、これまで得られなかった資料の入手に恵まれた。また、日本経営学会の全国大会が出身校である慶應義塾大学で開催されたこともあり、主催校関係者として運営に携わる一方、自らの研究成果に基づいて議論を交わすことによって、研究のさらなる発展を図ることができた。国外出張は行わなかった。 これらの助成を受けた研究の結果、得られた新たな知見は、下記のとおりである。 中小企業の多くが下請型企業である。経営資源の絶対的な制約により、元請企業との取引において不利な状況に立たざるを得ない場合が多いが、実際にはそうではなく、元請け企業と同等、もしくはそれ以上の力をつけて成長を遂げた中堅企業もあった。トップが自らの問題意識に基づいて自社の将来を考え、自発的に意識改革できているかどうか、そして組織として学習する仕組みが構築しているかが転換点であることが明白になってきた。この差が、独自の製品市場を開拓できるか、下請型企業に止まるかを分けている。 以上が、平成18年度の成果であるが、中堅企業成長の理論的基盤、それに基づく大量観察まで至っていない。まだ課題は山積しており、それに回答を与える研究を続けていく必要がある。
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