研究概要 |
最近、企業のリストラクチャリングが注目されている。特に、リストラクチャリングに伴う雇用調整、人員削減、解雇、職業教育・訓練は、今日の重要なイシューである。ヨーロッパ、特にドイツで企業のリストラクチャリングは進展し、その動向は日本にも示唆に富む。従って、本研究は解雇プロセスの日欧比較によって、戦略人的資源管理(SHRM)と個人のキャリア形成を明らかにし、職業教育・訓練システムの国際比較も分析・検討した。第1に、ドイツ、スイス、日本の職業教育・訓練システムの違いが、企業のリストラクチャリング、人材開発及び人的資源戦略、競争戦略に与える影響について、国際比較を行った。職業教育・訓練システムの相違と、労働組合や労使関係、コーポレートガバナンス等の経営システムの違いとの関連性も考察した。研究成果は、独語学術論文'Stand und aktuelle Herausforderungen der Hochschulausbildung in Japan'(VHB:Verband der Hochschullehrer fur Betriebswirtschaft e.V., Mai, 2008)および学会報告'Berufsausbildung und Human Resource Management Strategien:Ein Vergleich zwischen schweizerischen, deutschen, englischen und japanischen Firmen'(Personalokonomie Netzwerktreffen in Paderborn, 18 Januar,2008.)である。第2に、リストラクチャリングやアウトソーシングの進展する中、個人のキャリア形成を検討した。最近、境界を超えたキャリアが広まりつつある。境界を超えたキャリアとは、専門的なスキル・知識を磨きながら、どの会社にも自分を縛り付けることなく、キャリアを積んでいく働き方である。境界を超えたキャリア形成に重要なのは、コラボレーション、専門性、キャリア・ヴィジョンである。研究成果は、'Emerging female entreprenurship in Japan:A case study of Digimom Workers'(Thunderbird International Business Review, September, 2008)、及び二神枝保・日置弘一郎ほか『コラボレーション組織の経営学』(中央経済社、2008年)である。第3に、ドイツにおける企業のリストラクチャリングと解雇の動向を検討した。ドイツ企業の人事担当者を対象としたヒアリング調査も実施し、リストラクチャリング、解雇プロセス、職業教育・訓練を実証的に分析した。解雇制限法や労働時間の日独比較も行った。研究成果は独語学術論文'Anpassung an strukturelle Anderungen der Beschaftigung:Ein Vergleich zwischen Deutschland und Japan' ZfB(Zeitschrift fiir Betriebswirtschaft)に作成・投稿中である。
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