研究の目的は、自社単独では製品を開発できない競争環境において、モジュール技術を外部から結集する戦略とマネジメントを明らかにすることである。近年普及の進んでいる情報家電分野もモジュール化の特質があることがわかってきた。しかし、日本企業は優れた製品開発を行なっているにもかかわらず、収益性と競争力に問題があることが指摘されている。本研究はこうした課題を念頭において、モジュラー型製品分野における戦略とマネジメントを明らかにしていくことである。研究方法はモジュール化の進んだPC企業の製品開発に焦点をあて、企業への訪問調査と製品データベースの作成を行なう。 本年度は台湾企業への訪問調査の実施と、製品データベースの作成を実施した。台湾ではPC企業(エイサー、クオンタ、ウインストロン)への訪問調査を実施した。また製品データベースとして、業界調査企業と協力し、1994年から2005年の12年分、モバイルPC分野の主要企業16社を選定し、市場成果(出荷台数・出荷金額)を収集した。そしてこの期間の各社の開発した製品シリーズをデータベース化した。現在、統計分析の手法で製品戦略と市場成果の関係を分析している。また製品開発に関するアンケート調査表の作成を行なっている。 研究調査全般を通じて、モジュラー型の製品開発は、従来論じられてきた「部品・技術の組み合わせ能力」よりもはるかに難しいプロセスであることが明らかになってきた。技術の変動性や顧客ニーズの複雑性で特徴づけられるモジュラー型製品では、単純な部品・技術の組み合わせの力では競争力を持てないということである。この発見事実をもとに、学会発表(組織学会全国大会)において本研究の概念的フレームワークを提示した。また、事例分析の研究論文、および製品戦略類型に関する研究論文を公刊した。この他に、神戸大学経済経営研究所主催の情報家電産業・技術経営研究会において研究発表を行なった。
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