本研究の2年目である平成18年度は、協力企業の参加を得て、実際に設計構造行列(DSM : Design Structure Matrix)の試作を行った。それにより、DSM分析における作成手続きや分析上の制約条件などについて、以下のことが明らかになった。 (1)DSM作成においては、分析対象となる製品システムの定義が非常に重要である。とりわけ部品システムを分析とする場合、製品のシステム階層のどの部分までを分析対象とするかによって、分析結果が大きく左右されることが明らかになった。 (2)DSM作成においては、分析対象の製品システムを構成する要素をどのレベルまでブレークダウンするかも分析手順上重要であることが分かった。あまりに詳細なレベルまで構成要素をブレークダウンすると、DSMが瑣末な依存関係まで記述してしまい、DSM本来の長所である製品設計情報の一覧性や要約性が活かされない。他方で、構成要素への分解が不十分でメッシュが粗いと、重要な依存関係を見逃してしまい、分析ツールとしての本来の役割を果たさない。本年の調査の結果、製品システムを第3層程度まで分解すると、適切な分析結果が得られることが分かった。 (3)製品を構成する部品やシステム間の依存関係の判定については、企業の実際の製品開発者と協議し、判定基準の定式化を行った。 こうしたDSMのパイロット的作成を通じて、本年度は実証分析に必要なDSMの作成手順や制約要件を明確化することが出来た。これらの研究の成果は、第80回日本経営学会(全国大会)および2007年度組織学会において研究報告を行った。 本研究の最終年である平成19年度は、自動車モジュール部品について、種類別のDSMを時系列に作成し、実証的にモジュール部品の製品アーキテクチャ特性の分析・評価を行っていく予定である。
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