大学やインキュベータは、ベンチャービジネス(以下、VB)に対し様々な経営資源を提供することを通じて、産業集積の維持・形成・発展に寄与しうる。特に、大学には、自然科学上の研究成果をVBに提供することが求められる。また、インキュベータには、施設・設備といったハードをVBに提供することが求められる。しかし、VBの経営者に対するこれまでのヒアリング調査等から明らかになったことは、彼らが自然科学上の研究成果や施設・設備といったハードよりも、むしろマネジメントやマーケティングに関わる知識ないしスキルを必要としているということである。つまり、経営学をはじめとする社会科学上の研究成果に対する期待が極めて高い。そこで、本研究では、社会科学系の大学・学部やインキュベータが、マネジメントやマーケティングの面において、VBに対し実際にいかなる支援を提供しているのかを明らかにすることを目的とした。特に、平成17年度は、インキュベータによるVB支援の調査・研究を中心に行った。その具体的内容は以下のとおりである。 1.インキュベータに関する文献や報告書、資料の収集 2.インキュベータに関する文献や報告書、資料の調査 3.インキュベータの役割に関する仮説の設定 4.インキュベータの実態調査(大阪、花巻、神戸) 5.実態調査の整理と分析 以上の調査・研究から明らかになったことは、有効に機能しているインキュベータには必ずインキュベーション・マネージャーが常駐し、VBに対してマネジメントやマーケティング面での支援を提供しているということである。ただし、具体的な支援の内容についてはインキュベータによって相違が見られ、それぞれの実状に応じた活動が展開されていた。そこで、平成18年度は、インキュベータによる各種支援策の体系化を図ると同時に、社会科学系の大学・学部についても上記と同様の調査・研究を行いたいと考えている。
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