研究課題
本研究は筆者がこれまで行なってきた研究の延長線上にあり、地域に存する企業の本社機能の集積要因としての信頼の機能を産業別に明らかにする目的で着手された。筆者は地域イノベーション・システムに関する研究を通して、地域の優良企業が都市に本社機能を移転させない理由として、地域の顧客や供給業者などの多様な主体との間に形成された信頼関係が寄与していることを明らかにした。また、地域企業によるイノベーティブな成果の背景には、協力主体との絶対的な近接性が存在することを明らかにした。一方、並行して行なっている石油化学製品技術の産学官による共同開発に関する研究では、高度に優れた技術が事業化に結びつかない例は少なくないこと、多様な主体の連携による研究開発は時に状況を俯瞰する主体が欠如しそのマネジメントは非常に困難であることを知った。そして、当該産業の研究開発マネジメントに強い関心を持つに至った。ここでは、上記の研究を併合させ、石油化学製品製造業の研究開発マネジメントの実態を把握し、イノベーションに結びつけるための要件を明らかにする。以下、本年度に行なった活動を、本年度研究実施計画の事項に対応させて記述する。1.文献レビュー化学産業に含まれる業種は多岐にわたり、石油化学産業のみを対象にした研究はあまり多くない。しかし、特定のコンビナートに関する研究や周辺地域の経済効果などに注目した研究は散見された。2.質問票調査の企画石油化学製品製造業の研究開発マネジメントに注目し、その実態に関するデータを取得するため、質問票を設計し、2006年2月末に427社の研究開発部門の部門長を対象にした質問票調査を実施した。現在、回収された質問票の入力作業中である。3.研究発表本年度は、冒頭で記述した継続研究の成果をPortland International Center for Management of Engineering and Technology、研究・技術計画学会、東京富士大学学術研究会において発表した。2.の研究成果の発表は来年度から行なう。
すべて 2006 2005
すべて 雑誌論文 (4件)
富士論叢 50・2
ページ: 1-14
Portland International Center for Management of Engineering and Technology PICMET,2005
ページ: 118
研究 技術 計画 Vol.20, No.3
ページ: 196-204
研究・技術計画学会 第20回年次学術大会 講演要旨集 I
ページ: 439-442