当研究では組織間におけるメタ・マネジメントを主題としている。「メタ・マネジメント」とは、組織間をまたぐマネジメントの展開の前提として、対象の操作可能性を獲得する組織内のムーブメントとしている。特に実務面および研究面のいずれから見ても、組織間マネジメントの中ではSCMが先行していることから、当研究における焦点の比重は特にSCMに置いている。 平成18年度は日本物流学会学会誌に「ビールメーカーの事例研究に基づくサプライチェーンのメタ・マネジメント問題に関する考察」というタイトルで論文を投稿した(すでに審査を通り、6月発行の学会誌に掲載予定である)。当論文で、SCMにおけるメタ・マネジメントの考察に場の思想を援用した。ビール業界の事例に基づいて、場の思想から導かれる場の成立要件から、現在のサプライチェーンの取組みの多くを説明することができた。社内の取組に関してはメタ・マネジメントとして明示的・体系的ではないが、場の形成とその貢献が確認できた。一方、社外との取組においては、場の形成が中程にあることが確認できた。この場の遷移と取組の進展の符合から、サプライチェーンにおける場の形成の必要性が伺え知れる。したがって、場の形成を推進するメタ・マネジメントのあり方を追求していく価値は充分にあると考える次第である。 その他、平成18年度の具体的な活動内容は以下である。 (1)場の理論の援用可能性の吟味を既存の経営学理論のフレームワークの内容確認を並行しつつ、文献調査により行なった。 (2)企業訪問し、実務家からヒアリングを行なった。当年度の調査対象はSCM実施企業10社程度であった(引き続き次年度も企業訪問を行なう) (3)業界団体やSCMコンサルタントとの議論を行い、研究のレビューと助言を頂いた。 引き続き調査研究を継続し、概念の精緻化に勤め、最終年度のまとめとしての学会報告と論文発表を行なう予定である。
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