今年度に実施した研究実績の概要は、以下のとおりである。 まず「保険金詐欺」が研究テーマの対象となっていることから、その事例について調査すべく、書籍・雑誌・新聞などの資料収集を実施した。またその際、日本の事例だけでなく、諸外国、特に近年、急速にその市場を拡大させている中国の事例についての情報を集めることで、昨今における保険金詐欺の傾向(保険金詐欺を誘発する条件やその状況など)についてのまとめを行った。 次に本研究では、単に保険金詐欺の事例研究を行うのではなく、それを「経済(学)的に」分析していることに主眼を置いていることから、本研究を行う上で援用可能と思われる経済理論の研究についての検討を行った。具体的には、保険金詐欺が、「情報の非対称性」を原因として生じる現象であることに注目した上で、近年その発展がめざましい「情報の経済学」あるいは「リスクの経済学」の分野における研究成果についてのレビューを実施した。 さらに本研究では、このような保険金詐欺を抑止するためのシステム等についても概観した。保険金詐欺を抑止するためのシステムは、各保険会社によって実施されるもの、いくつかの保険会社によって共同実施されるもの(現実的には業界団体である「生命保険協会」や「生命保険文化センター」などによって実施される可能性が高い)、政府等による規制という形で実施されるもの、に分類可能である。本研究では、それぞれの手法の有利性および不利性について検討するとともに、各主体が採用しているあるいは採用できると思われる抑止システムの在り方についての検討を行った。
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