本研究は、華人・華僑資本企業が中国市場に進出した経緯や戦略、母国市場との事業の関係性、および参入パターンの特徴を明らかにすることを目的とする。特徴のある個別企業に対しては、それぞれのマーケティング展開プロセスを明らかにする。 本年度は、本研究費補助金を受ける前に行っていた予備調査をベースに、企業インタビューや現地調査を含めた実証研究を精力的に行った。最初の研究成果は論文「華僑系資本の中国小売市場への参入動向」(2005年3月)に公表し、日本商業学会関東部会の定例研究会(2005年4月)においては口頭報告を行った。それに基づいて、2005年8月には中国・上海において、また2006年1月と3月には台湾において、企業インタビューと現地調査を行い、華人・華僑系企業の実証分析を行った。 対象とした企業グループ10社を基礎調査で比較した結果、以下の特徴が捉えられる。 (1)華僑系資本の最初の進出先は、広州・深〓を中心とした珠江デルタ、上海を拠点とした長江デルタ、北京・天津の環渤海という3大経済圏にわたっている。香港系企業の参入が早い。 (2)また、中国小売市場における事業展開は、大きくつぎの3パターンがある。 パターンI:本国(製造業、小売業)→中国(製造業、小売業)、台湾系企業に多い。タイのCPグループも同様である。 パターンII:本国(製造業)→中国(製造業、小売業)、一部台湾系企業。 パターンIII:本国(小売業)→中国(小売業)香港系企業が多い。 (3)資本提携およびM&A(企業買収・合併)の積極的な活用。 (4)国際移転の面で活発なのは、言語、文化面で共通性のある台湾・中国間の人材交流である。 そのほかに、台湾の統一企業グループの中国戦略という個別企業を対象として研究を深めた。その成果は、法政大学で開催された「中国流通研究会」(2006年3月)において報告を行った。今後もさらに研究を進めたい。
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