1.文献調査により以下の諸概念に関わる研究成果が整理された。 (1)消費者購買意思決定過程:そのモデル化について主要な研究がレビューされ、複数のモデルにおける諸概念の変遷が歴史的に整理された。特に、モデルに含まれる諸概念の追加、削除、精緻化については、消費者行動研究における方向性の転換に関連した形で理解された。 (2)情報探索と情報取得:概念定義が整理され、特に測定尺度という視点からその弁別性が確認された。同時に、課題、文脈、個人差などの影響要因について既存研究が整理され、特に情報取得量の増減を規定する要因について体系的な理解がなされた。 (3)ブランド知識:消費者購買意思決定局面において利用可能な情報である属性情報との異同が概念的に整理され、情報探索および情報取得概念との対応が確認された。その上で、外部情報取得量の減少と情報処理量の増加をもたらす可能性のあるものとして同概念が位置づけられた。 (4)目的志向性:階層構造を有する目的の概念定義が確認され、情報取得とブランド知識との間にある規定関係への影響が整理された。 2.文献調査による発見事項をもとに、実証研究に向けての準備がなされた。 (1)ケーススタディを通じた購買行動の把握のために:目的志向性とブランド知識水準を要因とした消費者の買い物行動を観察するケーススタディの枠組みが考案された。 (2)広告における情報提示方法に関する実務的理解のために:ドイツ国内メーカーの担当者へのヒアリング調査が実施された。高級車の広告作成において、訴求点などの属性情報や視覚情報の配置のマネジメントに関する情報が収集された。 (3)小売店舗における商品情報の提示に関する理解のために:日本およびドイツの百貨店において、どのような情報がどのような手段で消費者に提示されているのかについて、店頭視察と購買行動の観察がなされた。
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