平成18年度は、「会計基準設定の国債的共通基盤の形成に関する研究」という標記の研究課題に照らして、米国財務報告システム改革におけるディスクロージャー規制および会計基準設定の基本姿勢に関する一連の取組みを検討した。 当初は、「会計基準設定の姿勢の変化」に焦点を当てて、原則主義及び細則主義による会計基準設定の変化を引き起こした要因の解明に取り組む方針であった。しかしながら、その後の研究資料の収集やヒアリング調査を通じて、規制主体の性格(Public of Private)に焦点を当てた会計政策の構造の解明につながる研究領域の拡張につながるとの示唆を受けたので、今後の研究との連続性を調整する作業に着手した。その結果、規制主体の性格の違いに焦点を当てた、2つの研究成果を取りまとめることとなった。 当初の研究方針を発展的に修正する必要に迫られたため、平成18年度の研究成果は、同年度中に結実することができなかったわけであるが、一翌年度の平成19年度において発表する予定である。 まず、「米国財務報告システム改革と会計基準設定環境の再構築」と題して、経営者と監査人の癒着構造にメスをいれ、監査人の独立性を厳格化した、SECによる財務報告システム改革が、会計基準設定環境の再構築をめざしていたことを明らかにする予定である。この論文は、『千葉大学経済研究』第22巻第2号(2007年9月予定)に投稿中である。 また、「会計基準設定の基本姿勢の論争とその後の行方」(仮題)と題して、会計基準設定の基本方針の論争を通じて、米国の会計基準設定主体の現場責任者であるFASBが原則主義基準と細則主義基準の中庸に位置する目的指向基準を採用し、会計基準設定の簡素化に務めている現状と課題を明らかにするものである。なお、この論文は『千葉大学経済研究』第22巻第3号(2007年12月)をめざして、投稿準備中である。
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