研究概要 |
本研究の目的は、会計情報を用いた価値評価をダイナミックな視点から実証的に分析する点にある。具体的には、資本市場と組織のダイナミズムを考慮した価値評価に関する研究である。 今年度の具体的な成果は、次の3つである。第1に2006年9月にシドニーで開催されたAsian Academic Accounting Association, 7th Annual Conferenceにおいて、"Does R&D increase Shareholder's value?"という題目で、学会報告を行った。第2に、その成果は、"Intangible Assets' Effecton Shareholders' Value,"というタイトルで、オックスフォード大学出版会から公刊された英語の本の一部として公表された。そこでの発見事項としては、グローバルな医薬品産業・バイオテクノロジー産業を対象とした分析においては、相対的に株式価値が高い企業群においてはR&DはPBRに効いている。このような企業のR&D投資効率は高く、期待超過利益も高く、その結果としてPBRも高いものと推測することが可能である。しかしながら、PBRの低グループにおいては、R&D投資はPBRには何ら影響を与えていなかった。第3の成果は、「産業内利益率格差」に関して、新たな発見を行った点である。日本、米国、欧州を比較すると、産業内の利益率のバラツキに大きな差がある。日本は格差が小さく、米国は最大である。そして欧州はその中間に位置していることが判明した。産業のダイナミズムを、会計情報を用いて分析する新たな地平線を切り開ける可能性が見えてきた。
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