平成18年度は経営者の会計行動と利益の質について、次の2つの研究を行った。 1つは、経営者の業績予想と利益の質に関する実証分析であり、次の3点を明らかにした。第1に経営者の業績予想は前年度の会計発生高が夫きいほど楽観的であり、経営者は利益のリバーサルル効果を十分には理解していないことである。第2に、前期の裁量的会計発生高が翌期の利益に与える影響は理解しており、業績予想に反映されているが、非裁量的会計発生高が翌期の利益に与える影響は十分には理解していないということである。第3に、経営者の業績予想修正に季節性は存在し、その頻度も異なる。なお、この研究については、2006年11月に早稲田大学で行われたディスクロージャー研究学会・第8回研究犬会で「利益の質と業績予想」というタイトルで発表を行った。 いま1つはR&b投資に対する株式市場の評価に関する実証分析であり、次の2点を解明した。第1に、株式市場はR&D投資に関する情報を決算発表時点では適切に株価に反映せずに過小評価しており、決算発表後に徐々に株価に反映するということである。第2に、株式市揚は、R&D集中度が高く投資家にシグナルを効果的に伝達している企業に対してだけ、決算発表後に適切にR&D投資の経済的効果を株価に織り込むということである。この研究については2006年9月にシドニーで開催されたAAA(Asain Academic Accounting Association)の第7回カンファレンスで"Why Does Market Undervalue Research and Development Expenditures? Functional Fixation Hypothesis vs. Information Asymmetry Hypothesis"というタイトルで発表を行った。
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