本研究の目的は、第1に、先行研究の厳密なレビューおよび事例研究を通じて、バランスト・スコアカード(以下BSC)の導入プロセスに関する知見を蓄積していくことである。第2は、BSC導入による成果について明示的に評価を行うことである。 平成17年度においては、理論的枠組みと仮説命題の導出を研究活動の中心とした。第1の目的に関しては、網羅的に先行研究のレビューを行うとともに、BSCを導入・実践している企業2社に対してインタビュー調査を行った。インタビュー調査を通じてBSCの導入プロセスに関する知見を得るものの、本研究ではBSCがマネジメント・システムとして定着するまでを導入プロセスと捉えるため、今後も継続的に調査を実施する予定である。 なお、上記のインタビュー先のうちの1社には一昨年より調査を実施しており、BSC導入・実践による成果を検証する段階にある。そのため、第2の目的を達成すべく、組織成員に質問票調査を配付・回答してもらうよう打診している。ただし、現時点において了承は得られていない。質問票の見直しを図った上で、引き続き交渉していく。 今年度の成果としては、論文一編(「バランス・スコアカード導入・実践による成果の検証に関する考察」)を発行している。先行研究において導入成果として測定されている変数は、財務業績に関する知覚、ROAや株式リターンのような財務業績の実数値、評価者(導入推進者)による概括的な成功判断に限定されている。それらに対して、組織成員の「学習活発度」を成果変数とする、BSC導入・実践による成果を検証するためのモデルを提示した。モデルの実証については次年度以降の研究課題である。
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