本研究の目的は、第1に、先行研究の厳密なレビューおよび事例研究を通じて、バランスト・スコアカード(以下BSC)の導入プロセスに関する知見を蓄積していくことである。第2は、BSC導入による成果について明示的に評価を行うことである。 平成18年度においては、平成17年度に導出した理論的枠組みと仮説命題を精緻化することを研究活動の中心とした。具体的には、日本会計研究学会第65回全国大会において「バランス・スコアカードを機能させる要件に関する考察」というタイトルにて研究報告を行った。 研究報告では、まず、わが国企業のBSC導入企業の財務業績を通時的に分析した上で、財務業績がBSCの導入成果を測定するための変数にはならないことを示した。次いで、組織成員の「学習活発度」を成果変数とする、BSC導入・実践による成果を検証するためのモデルを提示するとともに、どのように業績指標を利用すれば「学習活発度」を向上させることができるのかについて考察した。 他の研究者との意見交換からモデルの精緻化を図るものの、モデルの実証について次年度の研究課題である。現在も実施しているインタビュー調査において、BSC導入・実践による成果を検証できる段階にある企業が1社ある。それゆえ、モデルの検証を行うべく、組織成員に質問票調査を配付・回答してもらうよう打診している。ただし、現時点において了承は得られていない。質問票の見直しを図った上で、引き続き交渉していく。 なお、上記の第1の目的に関しては、継続して網羅的に先行研究のレビューを行うとともに、BSCを導入・実践している企業に対してインタビュー調査を行っている。
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