研究概要 |
本研究は,近年の関連制度の改正も踏まえた上で,監査人の外見的独立性に影響を及ぼす要因を実証的に明らかにすることを目的としている。 今年度は,昨年度に引き続いて,アメリカを中心として行われている既存の実証研究を,特に研究方法として実験を採用しているものを中心にレビューした。すなわち,これまでに提示されてきた監査人の独立性に関する概念フレームワークを検討し,それに基づいて,本研究において外見的独立性への影響要因を分析するためのフレームワークを構築するとともに外見的独立性を対象とした実証研究を検討・整理した。そこでは,外見的独立性に関する既存研究の大半が,独立性リスク要因の1つであるインセンティブに関係するものであるが,その研究結果は一貫していないこと,独立性リスク要因のもう1つのリスク要因である監査人の判断基準およびリスク緩和要因(セーフガード)が監査人の外見的独立性に及ぼす影響についての研究はほとんど行われていないことが明らかとなった。 本研究において,検討しようとしている要因のうち監査報酬額はインセンティブに関係し,ガバナンス形態はリスク緩和要因(セーフガード)に関係する。前述のように,リスク緩和要因(セーフガード)については既存研究ではほとんど扱われていない。そのため,ガバナンス形態という要因の外見的独立性への影響を明らかにするための研究方法として,当初予定したように実験を用いるのがよいのか,あるいはアンケート調査によるほうがより望ましいのかについて現在検討中であり,そのいずれかを来年度中に実施する予定である。
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