研究概要 |
本研究の目的は,「アライアンスにおける組織間のコントロール構造の体系を明らかにし,パートナーを意識して各企業が取り組むコスト・マネジメントの実態を解明すること」にある。この研究目的を達成するために本年度は,先行研究の文献レビューとインタビュー調査を計画した。文献レビューの結果からは,取引コスト論だけでなく,パートナー間の情報共有と信頼構築,そして管理会計情報の利用等が重視されていることが明確になった。また,アライアンスに関する概念変数の整理を進めることができた。そこで,文献レビューから得られた知見を確認すべく,数社にインタビュー調査を実施した。まだ,これらの調査は十分とはいえない状況にあるが,次のような知見が得られている。まず,当初から想定されていた点として,組織間関係において企業は社会的ネットワークに埋め込まれており,必ずしも二者間の関係性だけのコントロール構造ではないことが明らかになった。また,戦略的アライアンスである合弁会社へのインタビューからは,分業体制における各企業のコスト・マネジメント手法の巧拙がアライアンスの成否に影響を与えている可能性を見いだした。他方,当初の想定と異なる点として,本研究は契約後の企業間コラボレーションに焦点をあてていたが,契約までの過程がその後の事業運営や企業間活動の調整に影響を与えることから,分析対象領域を拡張する必要性も認識された。以上のように一定の知見が得られているが,現在,研究雑誌等に論文を発表するまでには至っておらず,早急に本研究の中間成果を取り纏めるべく準備を進めている段階にある。これらの活動以外では,ヨーロッパ会計学会など学会に積極的に参加し,組織間管理会計に関する現状・動向の把握に努めた。また,各種データベースや様々なソフトウェアを準備することでアライアンス事例の収集・分析を着実にすすめており,今後の調査に繋げる予定である。
|