研究概要 |
平成18年度は、負の暖簾の資本市場における情報有用性について昨年度の分析に基づき、さらに詳細な実証研究、ならびに対称項目である正の暖簾、無形資産に関する設定過程について調査研究を実施した。研究、調査結果は以下の通りである。 1,負の暖簾と呼ばれる企業結合時に生じる貸方項目は、わが国の連結会計基準では、借方項目である正の暖簾と左右対称の会計処理を求められている。そのため、正の暖簾ないしは無形固定資産について、アメリカ、IASB、イギリスの制度設定について調査を行ない、この研究結果については第133回国際会計研究会にて報告し、木村、向編著『財務会計論』のなかで発表した。 2,負の暖簾は、必ずしも(1)負の超過利益の受入にかかるものだけではなく、その他に(2)ターゲット企業の割安購入、(3)識別可能資産の減損兆候、(4)将来における事業組織改善の必要性という要因が考えられるが、わが国の会計制度は画一的処理を行っている。この会計制度に基づいて報告された会計情報の資本市場における有用性に問題がある点について実証的に分析を行なった。この研究結果については第139回国際会計研究会にて報告を行なった。 3,2,における研究に基づいて、負の暖簾が発生した企業結合について、企業結合が行われたケースごと(例えば、敵対的買収、事業拡張を目的とする買収、不採算関連会社の救済目的の買収等)に分けて実証分析を行ない、現行会計基準での資本市場における情報有用性を確保できるケースを明らかにし、情報有用性が確保されないケースでは、昨年度における理論研究を下に、情報有用性を確保可能な会計処理を考察する。この研究については、年度末まで行ったため、平成19年度早期に論文として公表する予定である。
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