研究概要 |
本年は、引き続き、知的資本の個別項目に関する資産性および公正価値測定について、問題の解明に取り組むとともに、わが国における知的資本会計の実態調査を実施した。 まず、知的資本の個別項目に関する資産性および公正価値測定について、とくに人的資本に焦点を当て、人的資本の価値情報が提供されているインドのIT企業のケースを用いて、人的資本の資産性および人的資本会計の展開可能性について理論研究を行っている。具体的に、以下の3点について検討を行っている。第1に、資源ベース観の下で、人的資本の持続的競争優位について検討し、現在のインドIT産業において人的資本が持続的競争優位の源泉をなしていること、第2に、人的資本の資産性と公正価値測定の展開可能性について議論し、人的資本には資産性があり、公正価値測定が可能であること、第3に、インドのIT企業のケースを分析することで、人的資本がアニュアル・レポートで実際に評価・開示されており、ブランド価値とともにオンバランス化が指向されていること、である。現在、執筆中であり、論文の形で公表する予定にしている。 つぎに、わが国における知的資本会計の実態調査について、EUで実施された先行研究で用いられた質問票をもとにして、東京証券取引所1部、2部およびマザーズ、大阪証券取引所1部、2部およびヘラクレスの上場会社2,773社に質問票を郵送し、質問票に回答の上、返送してもらう形で実態調査を実施した。質問票は、知的資産(知的資本)の認識、測定および報告に関連する項目で構成されている。現在、回収された質問票について分析作業を進めている段階であり、今後、論文の形で公表する予定にしている。
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