平成18年度本研究は、平成17年度に引き続き「富山県パーキンソン病友の会」を主たるフィールドとし、集会等に参加し、エスノグラフィーのデータを蓄積した。併せて、パーキンソン病を持つ人2名、および、「リハビリジム」(自発的にリハビリテーションに取り組む人々によって結成された集まり)の指導的メンバーへのフォーマルなインタヴューを行った。 その結果として、パーキンソン病セルフヘルプ・グループにおける人々のナラティヴとして、(1)薬の調整を主導的に行う物語、(2)リハビリテーションの物語、(3)ユーモア、という三つの事項が注目されるべきものとして浮かび上がってきた。これら三つのナラティヴは、「回復の物語(the restitution narrative)」を語りきれない状況にあるパーキンソン病に関わる人々にとって、それぞれ限界を含むものではある。しかし、だからこそ希望のある物語をもって生きるうえでは貴重な一種の資源としてとらえることができる。そして、そうした資源を内在させる点にセルフヘルプ・グループ、リハビリテーションを目的とする集団、そしてホームページ上で体験を書く場の重要性と、さらなる支援の必要性が明らかとなった。 平成19年度は、さらなる調査を継続しつつ、学会発表から始めて論文発表へという手順で成果を公開する段に移る。
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