3ヵ年の研究計画にしたがい、平成17年度においては(1)ウェーバーのテクスト内在的研究としてウェーバー方法論の読解を進め、(2)ウェーバーの理論的転回の外的環境に関する研究として同時代の社会学関連雑誌掲載論文の収集に努めた。 その結果として、(1)ウェーバー行為論の転回、特に1913年の『理解社会学のカテゴリー』論文と1920年の『社会学の基礎概念』との間の行為概念の差異と認識論上の転回(特に主観/客観の対立軸の変移)との関連を突きとめることに成功した。 他方で(2)ドイツ・ハイデルベルク大学を中心とした、『経済と社会』執筆期(1910〜20年)と同時代の社会学雑誌掲載論文をある程度網羅的に収集した。このことから、例えば『社会学の基礎概念』における(現代で言う)社会生物学的な理論潮流に対する批判的記述が、当時の社会学において実際に社会生物学的な研究が拡大していたという事実と呼応するものであることを確認することに成功した。特にこの後者の意義はこれまであまり着目されておらず、学説史研究上の重要性は大きいものと考える。また、そのほかにも当時の社会学がかなり多様な潮流の割拠する混沌とした状態にあり、その中で学問的な制度化に向けての模索が始まっている動向を捉えることができた。 とはいえ、これらの研究成果を論文として公刊する段階にはいまだ至っていない。成果の公刊は平成18年度以降順次行なうこととしたい。
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