3ヵ年の研究計画にしたがい、平成18年度においては(1)ウェーバーのテクスト内在的研究としていわゆる『経済と社会』草稿群の読解を進め、並行して(2)ウェーバーの理論的転回の外的環境に関する研究として同時代の社会学関連入門書・解説書の収集に努めた。 その結果として、(1)いわゆる『経済と社会』旧稿(1910-1914年執筆)と改訂稿(1920年までに執筆)との関係を、前年度に読解を進めた『理解社会学のカテゴリー』(1913年)と『社会学の基礎概念』(1920年)との差異と関連づけて検討することができた。 他方で(2)ドイツ・ハイデルベルク大学を中心とした、『経済と社会』執筆期(1910〜20年)以降の社会学関連入門書・解説書をある程度網羅的に収集した。ここで収集した資料から、当時の社会学がかなり多様な潮流の割拠する混沌とした状態にあること、その中で学問的な制度化に向けての模索が始まっている動向を捉えることができた。特に社会学のこの多様な広がりの中でマックス・ウエーバーの構想する「社会学」がかなり特異な位置を占めていること(『社会学の基礎概念』における「ここで言う意味での社会学」という言明の背景!)が明らかとなってきた。 とはいえ、これらの研究成果を論文として公刊する段階にはいまだ至っていない。成果の公刊は最終年度である平成19年度に行なうこととしたい。
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