3ヵ年にわたる研究計画の最終年度として、平成19年度においては(1)ウェーバーのテクスト内在的研究的研究としていわゆる『経済と社会』草稿群の読解を進め、並行して(2)ウェーバーの理論的転回の外的環境に関する研究として収集した同時代の社会学関連入門書・解説書の収集の分析を行なった。 その結果として、(1)『経済と社会』草稿群の内在的読解としては、特に市場の位置づけを中心とした理論的アポリアが『経済と社会』に内在しているのではないかという仮説に至った。とりわけ『経済と社会』のいわゆる旧稿と改訂稿の双方に共通する経済類型論の際を分析する中で、両者の際を『経済と社会』全体の際の中に位置づける方向性を見出した。 他方で(2)ウェーバーの『経済と社会』執筆期(1910〜20年)以降の社会学関連入門書・解説書について分析を進めたが、当時の社会学がかなり多様な潮流の割拠する混沌とした状態にあることから、分析は難航を極めた。その中で学問的な制度化に向けての模索が始まっている動向を捉えることができたが、実際に社会学の制度化が確立する時期はもう少し後の時代(具体的には20年代後半)であることもあり、現時点で確定的なことは言い難い。特にウェーバーの『経済と社会』の理論的展開との関連はなお慎重な検討を要する課題であることが明瞭となった。 以上のことから、これらの研究成果を論文として公刊する段階にはいまだ至っていない。成果の公刊については今後順を追って速やかに行なうこととしたい。
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