研究概要 |
本年度は,農山漁村で生活する人びとの家族ライフスタイルについて計量的に分析することを目的として質問紙調査を企画した。質問紙調査のデザインを検討するにあたって,昨年度行なった農山漁村家族へのインタビュー調査から得られた知見を学会において報告したり(2006年5月,第57回関西社会学会大会),学内の研究会で今日の農村社会について情報を収集したり,さまざまな研究者と意見を交換した。それらを通して,農村,山村,漁村の家族ライフスタイルについては一纏めにして議論できないことが改めて認識されたため,今回の質問紙調査は農村部に焦点を当てることにした。質問項目については,家族ライフスタイルを決定する過程における「個人の自由」と「家族集団への責任」のバランスの問題,また,家族ライフスタイルと生きがいやウェルビーイングの関係について議論できるものを検討した。実査は,2006年12月となった。調査対象は,総人口に占める農家人口割合が51.7%(2000年)の島根県雲南市に居住する20歳以上の男女で,選挙人名簿から2,000人,無作為抽出法によって選出した。質問紙は郵送によって配票・回収した。有効回収票数は1,079票,有効回収率は54.0%となった。詳しい分析は次年度に,昨年度の調査結果との関連づけながら行なう予定であるが,回答者自身の家族について「強い絆で結びついている」「個人はそれぞれ自由である」に肯定的な回答はそれぞれ57.8%,56.4%と過半数を占めており,農村家族が個人の自由を認めつつ強い集団性を維持している様子がうかがえた。また,自分たちの家族について「幸せな家族である」と評価する割合は,76.0%と高かった。今後は,これらの家族意識や幸福感と基本的属性,地域関係,人生観,生きがいといった変数との関連を探る予定である。
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