平成17年度は、当初の計画通り、全国版の医師名簿である『日本医籍録』から、キャリアおよび出来事経験の計量分析が可能なマイクロデータを作成することにあてられた。戦前期の『日本医籍録』は、劣化が著しく、国会図書館でもマイクロフィルム化が進められているさなかであり、閲覧は可能であるが、複写は困難な状況にある。そのため、閲覧・複写ができ、当面分析をするうえで必要な大正14年、昭和3年、昭和26年度の名簿から、東京府の医師にかぎってデータ入力を行った。 データ入力の件数は、1年のみでも5000件を超える。効率的な入力をするには重複する事項をできるだけ避けて入力をすすめたい。そこで、データをリレーショナル・データベースで加工し、入力医師のキャリアに関するデータベースを作成した。現在、計量分析をするため、資料の記載事項をもとに、一部の年度について個人別のキャリア・データへとデータの加工を行っている。 また福島県の戦後の医師データについても、昭和26年度のデータ入力、加工を進め、従来構築していた福島県の医師キャリア・データとの接合を行い、医師の戦前・戦後の間で、名簿から消滅した医師の特性に関する分析を行った。 さらに当時の社会状況を資料から把握すべく、福島県立図書館にて、府県統計書、地元医師の回顧録をはじめとする文書資料の収集を行った。 東京在住の医師に関してはデータが未完成であり、現時点で本研究の成果といえる論文、図書は発表していない。福島県医師のキャリア・データと文書資料の分析を中心に、現在、学位請求論文を執筆している。
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