本研究は、各国の高齢化の現状と高齢者施策をふまえ、高齢者施設に入所する高齢者に焦点をあて、日本、台湾、シンガポールの高齢者の生きがいと世代間関係についての国際比較研究を行うことを目的としている。 2005年8月に台湾を訪問し、台湾の高齢者施策についての資料収集を行った。台湾の総人口に占める65歳以上の高齢者の割合は9.2%(2003年)である。また近年台湾の出生率の低下は著しく、2003年には合計特殊出生率が1.23にまで下がり、日本の1.29を下回っている現状である。今後の高齢化率の推計では、2030年に22.5%、2050年には31.7%に激増するといわれている。 2004年末において、台湾全体で49の安養機構(老人ホーム)、813の養護機構(特別養護老人ホーム)、24ヶ所の長期介護機構があり、入居している人は4万2958人である。施設への入居状況は約70%で、3割のベッドは使用されていない状況である。その理由は、まず台湾の高齢者は施設入所を好んでいない、また家族もそれを望んでいないということがあげられる。そして、台湾には日本のような介護保険制度がなく、施設入所に伴うコスト面の問題がある。今後の高齢者施策の課題は、台湾の高齢者の多くは、住みなれた場所で家族と暮らしたいと望んでいるので、これら3割の空きベッドを可能な限りコミュニティのサービスに活用し、施設数を増やすのではなく、在宅ケアの充実が急務であろう。 2006年2月には、台湾にて特別養護老人ホーム2施設、デイケアセンター2施設計4施設の高齢者18名へのインタビュー調査を実施した。現在インタビューをまとめている段階である。シンガポールには2005年10月に訪問し、高齢者施策に関する資料を収集し、2006年度にインタビュー調査を行う予定である。
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