本研究「高齢者の生きがい形成と世代間関係に関する国際比較研究」では、高齢者に生きがいを与えている文化的、制度的、個人的要因を総合的に検討しながら、特に高齢者の生きがいに世代間関係がどのような影響を及ぼしているかを、台湾、シンガポール、日本の三ヶ国を対象に、国際比較研究によって明らかにすることを目的としている。 平成19年度は、65歳以上の高齢者を対象に、台湾の台北市(2007年9月)において17名、シンガポール(2008年1月)において15名、生きがいと世代間関係に関するインタビュー調査を行った。 高齢者の生きがい(生きる動機や活力になっているもの)、毎日の生活の喜びや楽しみ、孫や子どもとの関係性などについての聞き取りを実施した。日本と同様に、台湾やシンガポールにおいても年々、子との同居率は減少している。その背景には家族規模の縮小化、女性の地位向上や就労率の高まりなどがあり、世代間関係は変化してきていることが明らかになった。台湾とシンガポールでは、日本のような介護保険制度がなく、施設入所に伴うコスト面の問題もあるが、高齢者が施設に入所することについて、抵抗感をもっていることが示され、高齢期を様々な世代を含む家族と共にありのままに暮らすという生きがいのあり方が示された。台湾とシンガポールでは、社会で高齢者を支えていくという介護の社会化を広め、在宅ケアの人材育成とともに、魅力的な施設のあり方をも検討することが求められるだろう。
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