平成17年度は、さしあたり研究対象をナチズムの政治文化に絞り、これまでの研究を発展させるとともに、本格的に視覚メディアの図像学的分析に着手し、研究成果の出版のための準備を行った。 理論研究の面では、政治文化論・メディア社会論の理論的基礎づけを進め、フランクフルト学派を中心としたドイツの社会理論の検討を行ったほか、視覚メディアの図像学的分析の手法を検討した。 歴史研究の面では、ナチズムの政治文化に関する比較歴史社会学的研究を進め、新聞、雑誌、映画、絵画、彫刻、ポスターなど、各領域ごとのメディア政策の個別的特徴と全体的関連を考察するとともに、ナチズムの文化・社会政策一般についても検討した。また二度にわたってドイツへ赴き、ミュンヘン現代史研究所、バイエルン国立図書館、ベルリン連邦文書館、ベルリン国立図書館等で文献・史料の調査を行った。とくに視覚メディアを中心とした文献・史料については、イメージスキャナを使ってマイクロフィルムや印刷物のデジタル化・データベース化を進めた。 以上の研究・調査により、とくにナチ党大会やヒトラー崇拝の演出に関して、ナチズムのメディア戦略が一般に考えられるよりも柔軟で、プラグマティックな性格をもっていたことが明らかになり、その研究成果を雑誌論文として公表した。またナチズムの政治文化に関するこれまでの研究成果をまとめた著書を完成させ、その出版に向けて現在平成18年度科学研究費補助金(研究成果公開促進費)と申請中である。
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