平成19年度は、研究対象をナチズムの政治文化に絞り、これまでの研究を発展させるとともに、本格的に視覚メディアの図像学的分析に着手し、研究成果の発表を進めた。 理論研究の面では、前年度に引き続き政治文化論・メディア社会論の理論的基礎づけを進め、フランクフルト学派・保守革命派を中心としたドイツの社会理論の検討を行い、「政治の美学化」をめぐる問題を考察したほか、視覚メディアの図像学的分析の手法を検討し、ファシズム研究に応用可能な理論的枠組みを整備した。 歴史研究の面では、ナチズムの政治文化に関する歴史社会学的研究を進め、新聞、雑誌、映画、絵画、彫刻、ポスターなど、各メディアに見られる「指導者」「大衆」「共同体」のイメージの図像学的分析を行うとともに、新たに性とジェンダーのイメージに関する研究にも着手し、文化政策・社会政策との関わりについて考察を進めた。また、そのためにドイツヘ赴き、ベルリン連邦文書館、ベルリン国立図書館等で文献・史料の調査を行った。とくに視覚メディアを中心とした文献・史料については、イメージスキャナを使ってマイクロフィルムや印刷物のデジタル化・データベース化を進めた。 以上の研究・調査により、「指導者」「大衆」「共同体」のイメージを中心として、ナチズムのメディア戦略を含めた「政治の美学化」に関する研究成果がまとまり、これを著書として平成19年6月に出版した。また、性とジェンダーのイメージに関しても、ナチズムによって性教育が推進されていたことなど、新しい知見が得られ、その研究成果を学術論文として発表した。
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